Sachi です。最近は代数曲面論の本を読んだり、複素多様体の解析的理論の解説を眺めてみたり、
連接層の導来圏に関する勉強をしたりとフラフラしています。
一応主軸は Daniel Huybrechts による「Fourier-Mukai Transform in Algebraic Geometry」に据えているつもりですが、ちょっと別の文献に移るたびに内容をごっそり忘れてしまうので、"日記に残す" を実践することによって記憶への定着を図りたいと目論見ました。従って、間違った情報が多分に含まれることと思いますので、閲覧の際はご注意ください。
(注意) 本ブログは数学が趣味のアマチュアによる記事ですので、その点ご承知おき頂ければ幸いです。
また、紹介する文献の内容も然ることながら、基礎となる理論の理解も怪しい部分が多々あると思います。概念の用い方や記事内容の怪しい部分、補足などなんでも結構ですので、お気づきの点がありましたらTwitter(@sachiiiimath)までお知らせ頂けるとありがたいです。
今回はBeilinson Resolution についてです。
きっかけ
ネットサーフィンしていた時に偶然、Fourier-Mukai Transform に関するpdfを見つけました。
https://www.math.u-bordeaux.fr/ALGANT/documents/theses/kelly.pdf
上原先生・戸田先生による『連接層の導来圏と代数幾何学』を読んでいて、外部テンソル積( )の定義を見つけられずナニコレェ...と思っていたところ、丁度こちらに定義が書いてあり、ラッキーと思って眺めてみることに。すると、川又さんによる連接層の導来圏に関する論説で紹介されていたBeilinsonの定理についての内容の一部(?)と思しき内容を見つけたので、その部分だけ読んでみることにしました。
Beilinson Resolution
を体 上の 次元射影空間、 をそれぞれ第1,第2成分への自然な射影とします.
また, を対角成分のなす閉部分多様体, をその構造層とします.
Proposition 4.1.1
上記の仮定のもと, 局所自由分解
\begin{align}
0 &\longrightarrow p^*\cO(-n) \otimes q^*\Omega^{n}(n) \longrightarrow p^*\cO(-n+1) \otimes q^*\Omega^{n-1}(n-1) \\\
&\longrightarrow \cdots \longrightarrow p^*\cO(-1) \otimes q^*\Omega(1) \longrightarrow \cO_{\bP^1 \times \bP^1} \longrightarrow \cO_\Delta \longrightarrow 0
\end{align}
が存在する.
ここで, は の構造層 , はSerre‘s twisting sheaf , は の -微分形式の層です.
この局所自由分解を対角成分での Beilinson Resoution と言うようです.
の第一, 第二成分をそれぞれ , および をそれぞれ自然な射影とします.
と それぞれの Euler sequence (Hartshorne Ⅱ Theorem 8.13)
\begin{CD} 0 \longrightarrow \Omega_{\bP^n}(1) \longrightarrow \cO_{\bP^n}^{\oplus \ n+1} \longrightarrow \cO_{\bP^n}(1) \longrightarrow 0 \end{CD}
の および での引き戻しを計算することで得られる射 , の像を計算すると, それは対角成分 を定義する Ideal Sheaf と一致することがわかり,その結果得られる完全列,
\begin{CD} 0 \longrightarrow p^* \cO_X(-1) \otimes q^* \Omega_Y(1) \longrightarrow \cO_{X \times Y} \longrightarrow \cO_\Delta \longrightarrow 0 \end{CD}
から Koszul Complex,
\begin{align}
&0 \longrightarrow \bigwedge^n (p^* \cO_X(-1) \otimes q^* \Omega_Y(1)) \longrightarrow \cdots \\
&\longrightarrow \bigwedge (p^* \cO_X(-1) \otimes q^* \Omega_Y(1)) \longrightarrow \cO_{X \times Y} \longrightarrow \cO_\Delta \longrightarrow 0 \end{align}
を構成すると求める完全列が得られるというのが証明のアイデアとなっているようです.
詳細な内容について
定理の証明までを目標にある程度記事へのアウトプットを進めていたものの、Koszul Complex や Euler Sequenceなどの準備物について書いているとかなり冗長な記事が爆誕してしまいそうだということがわかりました。そのうち何回かに分けて書ければ良いなと思っています。
(参考文献)
- ON A THEOREM OF BEILINSON / JOHN R.CALABRESE
- The resolution of the diagonal and the derived category on some homogeneous spaces / Raffaele M. Carbone
- Fourier-Mukai Transforms in Algebraic Geometry / Shane Kelly
- 代数幾何学 1,2,3 / R. ハーツホーン著 ; 高橋宣能, 松下大介訳 ; シュプリンガー・ジャパン編